このインタビューは2021年9月24日 にしかわなおこと青木鮎美がラインにより行ったインタビューをもとに一部編集しなおしたものを掲載しています。
青木「どうもこんにちは 鮎美の部屋へようこそ。
今日は作者近影を撮るっていうので緊張していますけど、いつもの調子で気負わずやっていきたいと思います。
まあでも、今日はちょっとおめかししてピンクのボタンなんか付けちゃってますけど(笑)
早いものでこの『描かない鮎は塩焼きにされる』というタイトルで始まったブログも4年目を迎えました。
毎回いろんなことに挑戦してきましたが、今回はその中でも特別な回となりそうです。
そう、なんと今回は初ゲストをお迎えしてのトークブログに挑戦なのです。」
青木「ということでですね、どういう舞台セットでやろうかと日々考えてダイソーをウロウロしていたところ、
なんととても素敵な和室セットがあり、ようやくゲストをお呼びできるお部屋が出来上がった次第です。
さっそく記念すべき鮎美の部屋、第1回目のゲストをお呼びしましょう!
今年(2021年)3月に絵本『マルコはブランコにのって』を出版されたにしかわなおこさんです!
どうぞこちらお越しください。」
にしかわ「こんにちは にしかわなおこです。和歌山県出身です。」
青木「こんにちは、今日はよろしくお願いします。
なるほど、和歌山県といえばやはりパンダの飼育数日本一の県だという自信が垣間見れるとても素敵なお姿。
にしかわさんと私は4年前に土井章史さん(絵本編集者)の主催されている絵本ワークショップで出会いまして、
あの頃から唯一無二の存在感を放っていたにしかわさんですけれども、
今日はそんなにしかわなおこさんの人物像を少しでも皆さまにお伝えできればと思います。
では立ち話もなんですから、こちらへどうぞ」
青木「フフフ、出会った頃はこうして二人でお話する機会があるとは思っていませんでしたけども、
私としても友人の活躍というのは非常に嬉しいものです。
今日はどんなお話が聞けるのかとてもワクワクしています。
そういえばにしかわさん、以前連絡をとったときにちょうど和歌山県に帰省されていて、
たしかご実家の畑を荒らすサルとバトルされていたような…」
にしかわ「一年中バトッています。」
青木「今回ご紹介させていただくこの『マルコはブランコにのって』(以下『マルコ』と記載)にも豊かな自然が描かれていますが、
これはにしかわさんが育った環境にも通じるものがあるのですか?
あっ、ちょっと表紙の写真出せますか?
そうそう、それです。」
にしかわ「自分では、
育った環境(いわゆる自然に囲まれた田舎)は絵本で描く世界に、
直接意識したり影響が現れているとは思っていないです。」
青木「なるほど、そうなのですね。
私は東京出身なので、満天の星空とか、山に囲まれた風景というものはどこか幻想的になりがちですが、
この『マルコ』に出てくる山なんかは、ちょっとゾッとするくらい自然の脅威を感じることができて、
そこに「リアル」を感じていたのですが、それは直接意識して描かれたものではなかったのですね。」
青木「以前に、にしかわさんから聞いたお話しで
おばあさまが獣道について語られていたお話しがとても興味深かったのですが
そのお話しをもう一度聞いても良いですか?」
にしかわ「子供の時に、草むらで発見したトンネルの話ですね。
密集した草がトンネルのように、とっても小さい穴になって続いているのを見つけて、
自分も四つん這いになってトンネルに入ってみたところ、途中で見失って、
しかも自分の体の方が大きかったので、
草のトンネルを破壊してしまった。
という話を祖母にしたら、
『それは獣道で、山に住む獣だけが通ることができる道だから、人間が通ってはいけないよ』
と言われ、なぜだめなのか訪ねたところ、
『人間の道を獣が通っても、汚れないけど、獣の道を人間が通ったら、汚れるから』
と教わりました。
その時、深く納得した記憶があります。
その時、なすびは見当たらなかったのですが、トンネルはなすびの花の匂いがしていて、
そのことも祖母に伝えたところ、
『最後にそこを通ったのは、たぬきやなぁ』
と言っていたのも覚えています。」
青木「貴重なお話しありがとうございます。
そのお話しが印象的で、もう一度聞きたいなと思っていました。
なすびの花の匂いで、おばあさまはタヌキとわかったのですね。
タヌキとナス…
どんな関係が。」
にしかわ「なすびの花の匂いをかいでみると、
わかるかもしれませんね。
ちょっと獣の匂いがしますよ。(笑)」
にしかわ「神話や、言い伝えや、ふしぎな出来事や、
昔から現在まで伝わっているお話には、
今その場で見えないけれど、
どこかに、本当かもしれないと、
思わせる部分があると感じています。
それは、背景となる田舎の自然かもしれないし、
夜の闇かもしれないし、
そういう、話が繰り広げられる舞台としてのうそのない装置が、
説得力を持たせるのではないかと思っています。
なので、マルコの世界の背景にも、嘘のない描写で、木や山や虫を描こうと思いました。同じ季節に生きる植物と虫。
同じ生態系で住まう生き物、などです。」
青木「なすびの花の匂い、今度嗅いでみます。
嘘のない描写、
それは読んでいて感じました。
この人は肌で感じたことを描いているんだな、
ということが『マルコ』から伝わってきました。
『マルコ』だけではなく、
にしかわさんの描くお話には、
どれもにしかわさんの自然に対する誠実さと、
にしかわさんの生の声が入っているので、魅力的なのだと感じています。」
青木「次は『マルコ』の誕生秘話をお聞きしたいです。
『マルコ』の発想はいつ生まれたのですか?」
にしかわ「何かお話を考えよう、と思って考えたものなので、
いつだったのかは忘れてしまいました。
3年か、4年くらい前ですかね。」
青木「『かけた石ころ』というのは、にしかわさんにとってどんな存在なのですか?」
にしかわ「社会の中で、他者の価値観にさらされて生きるもの、です。」
青木「社会で生きるということは、そういうことなのかもしれないですね。
でも、そこに合わせてばかりいたら、自分が無くなってしまう。
マルコの葛藤は、物語の中である結末を迎えますが、
その結末が私にはとても意外でした。
そう捉えることによって、
救われる人がいるのだなという理解にも繋がるのですが
この言い方があっているのかは分かりませんが
にしかわさんの独特の価値観、
これこそがにしかわさんの
突き抜けている部分であり、最大の武器なのだと感じています。
ちなみにこの『マルコ』を描く際に、対象年齢みたいなものは設定しましたか?」
にしかわ「この年齢、というものは設定していません。
本当はそれではだめだと思いますが。
ただ、幼児、ではなく、児童向けなんだろうとは思いました。
自分的には、人間の皆様全員が対象です。」
青木「なるほど、人間ならだれでも、ですね。」
青木「そして驚くべきことにこの絵本の文字ですが
全部手書き書かれていらっしゃるとのことで!
確か、気に入ったフォントがなくて仰っていたような
そんなこと可能なんだ!と驚きました。」
にしかわ「担当編集者の方から提案された時は、
私も驚きました!
出版の企画に応募した段階で、気に入ったフォントがなくて、
手書きだったのですが、
編集者の方は原稿を見たときから手書きでいきたいと思って下さっていたようです。」
青木「文字のバランス感覚がすごいなと驚かされました。」
青木「では、まだまだお話を聞きたいところですが、
そろそろ終わりの時間が近づいてまいりました。
にしかわさん、この『マルコ』を読まれた読者の方々に
何かメッセージなどあればお聞きしても良いですか?」
にしかわ「『マルコ』を読まれた読者の方々から
『空』や『葉っぱ』が『印象的だった』という感想を頂きました!
自分は、皆さまが『空』と呼ぶところを『宇宙』と思って描いています。
そして『葉っぱ』一枚一枚に、均一化できず無視できない存在感を得ています。
砂粒一粒一粒、もちろん石ころにも同じ気持ちです。
なので、みてくださった皆さまが、
そのへんに何か感じるものを見出して下さっていることに、思いは伝わっていると感じ、
とても嬉しいと思いました!
お話を作っていくうちに、
自分は絵本で何を表現したいのかがわかってきたので、
うまく表現できるように、なりたい自分に近づいて行きたいです!」
青木「ありがとうございます。
にしかわさんの伝えたいことがやがてアイデアに変わり、作品へと昇華して『マルコ』が出来上がったという過程がとてもよく伝わりました。
では、最後に今後の夢や野望をお聞かせください!」
にしかわ「夢は、宇宙に行きたいです!
野望は、自分の中にある宇宙を、全部引き出して、人生を終えたいです!」
青木「にしかわさん、本日はありがとうございました。
『鮎美の部屋』第一回目ゲストはにしかわなおこさんでした。」
追記:
にしかわなおこさんは この度、「もりやまさんと まちやまさんは」という作品で2021年有田川絵本コンクールで最優秀賞に選ばれました。
おめでとうございます!!
こちらも書籍化を心待ちにしています。
にしかわなおこ著 作品一覧
●「マルコはブランコにのって」 2021年 文芸社
●「魚かもしれない」2009年 文芸社 (※詳細は本『魚かもしんない』/著 西川奈央子のブログまでお越しください。)
●「時追花」2006年 新風舎
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