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「あさごち」1話

 

 

 

「外には 危険が いっぱい あるのよ、おうちに いなさい。」

 そう言って ママは バナナを 買ってきて くれたけど

 それも なんだか くたびれて きちゃって

 「腐りかけの バナナなんて もういらない。」

 って、 一人で 声に出してから

 私は 家を 出ることに 決めた。 

 

 

 

 

 

 

 

穏やかな 春の風が 東から吹いてくる。

 「もう絶対に、 自分の選択は 間違えて いない。」

 そう 確信を 持って 

 外へ 飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、 あなたって なんて 名前の 花なの?」

 むらさき色の 花に 話しかけた。

 「あらあら、 世間知らずの お嬢さんが やってきたわね。

 名前? 勝手に 好きなふうに 呼びなさい。

 でも、 調子に 乗っていると、あなた 道に 迷うわよ。」

 「あら、素敵な 情報を ありがとう。

 おあいにくさま

 私、 道に迷うの 大好きなの。」